代表 齊藤 潔(御菓子司 名月)のインタビュー

御菓子司 名月 代表 齊藤 潔

御菓子司 名月 代表 齊藤 潔 (KIYOSHI SAITOH)

『横浜商業高校』卒業後大倉山にある『御菓子司 大倉山青柳』で5年間修行を積む。その後、父が開業した『御菓子司 名月』に入り今に至る。(京急逗子線 六浦駅徒歩3分)

幼き日から和菓子とともに育った道のり

昭和37年に父が創業した『御菓子司 名月』。私はその和菓子店の暖簾の下、父と母が懸命に商いに励む姿を日々目にしながら育ちました。そんな家庭環境でしたので、まわりからは「甘いものがたくさん食べられて羨ましいね」と言われることも多かったのですが、実は幼い頃の私はそれほど甘いものに強い興味を持っていたわけではありません。お菓子に囲まれた環境ではありましたが、必要以上に手を伸ばすこともなく、控えめに接していたのが正直なところです。どちらかというと体を動かすのが好きで、中学ではバレーボール、高校では野球に打ち込みました。高校では控え選手ではありましたが、甲子園という大舞台の空気に触れるという貴重な経験もさせていただきました。そんな部活動中心の高校生活の中で、将来について考えるようになったとき、ふと心に浮かんだのが、両親への感謝と恩返しの気持ち。そして自然と「和菓子職人の道を歩もう」と決意するようになったのです。高校卒業後は、大倉山にある老舗『御菓子司 大倉山青柳』さんで修行させていただくことになりました。もともとデスクワークよりも体を動かす職種に魅力を感じていたこともあり、朝から晩まで和菓子に向き合う日々は、自分にとってまさに天職ともいえる充実した時間でした。毎日の業務に加えて、勉強会や研修を通じて深く学べたことは、本当に貴重な経験です。また、特にありがたかったのは、人との出会いに恵まれたことです。修行先の社長さんは、現在の私にとって“和菓子の師匠”とも呼べる存在であり、結婚式では仲人まで務めていただくほど、長く深いご縁をいただいています。もともと私は人と話すのがあまり得意ではなかったのですが、師匠が非常に社交的な方で、立ち居振る舞いや人との関わり方をそばで学ばせていただきました。そのおかげで、今では和菓子の組合や金沢区の食品衛生協会の会長職を務めるようにもなりました。

和菓子に込める想い

和菓子というものは、季節ごとの移ろいとともに変化する、まさに“旬”を表現する文化そのものです。だからこそ、店頭に並べる際には、見た目でも楽しんでいただけるよう工夫を凝らしています。贈答用としては『金沢八景』という地元にちなんだ名前のついた商品や、明治神宮や神奈川県の銘菓に認定された品も取り揃えています。用途に合わせてお選びいただけるよう、常にお客様の目線での品揃えを心がけています。たとえば、ちょっとした手土産でも、地元の地名が入っているだけで渡す側も受け取る側もほっこりと嬉しくなるものです。お店で大切にしているのは「お客様のご希望をなるべくかなえること」。お店に足を運ぶのが難しいという方には、時間の許す限り私自身が直接お届けに伺うこともあります。ほんの少しの心添えかもしれませんが、お客様に寄り添った対応をしていきたいという想いは、昔も今も変わりません。

子どもたちにこそ、和菓子を

近年では、子どもたちの中に「あんこを食べたことがない」という子も増えてきたと耳にします。和菓子屋自体が減っていることも影響しているのかもしれません。そんな中ではありますが、当店は地域の学校と連携する機会にも恵まれています。たとえば、昨年は近隣の朝比奈小学校が創立50周年を迎えるにあたり、子どもたちがデザインしたオリジナルのお菓子を形にして欲しいという依頼がありました。そのお話をお受けし、子どもたちと直接ふれあいながら、皆で力を合わせてひとつのお菓子を完成させました。家庭で和菓子作りを体験することはなかなかありませんので、子どもたちにとっても貴重で楽しい経験になったようです。また製菓学校の生徒さんを受け入れることもあり、伝統が長く続くよう微力ながら行動しています。

地元の味、こだわりの逸品たち

当店の自慢は、神奈川県の指定銘菓である『巌くるみ』、明治神宮で奉納される『菊最中』、そして金沢八景の名を冠した『瀬戸之杜(せとのもり)』や『内川の暮雪(うちかわのぼせつ)』など、地域に根差した個性豊かな商品たちです。これらには金沢区のマークも入っており、オリジナリティの高い逸品としてご好評をいただいております。また『べっぴん娘』というどら焼きも人気商品で、これは金沢区内の5つの和菓子店がそれぞれ異なる特色を活かして開発したシリーズです。当店でも“べっぴん娘”の名に恥じぬよう、趣向を凝らした一品を用意しています。こうした取り組みを通じて、商工会議所や区役所の皆さまからも信頼をいただいているのは、大変ありがたいことです。とくに私がこだわっているのが“粒あん”です。小豆を1時間半かけてじっくりと煮て、蒸らした後、密漬けをして一晩寝かせ、翌日に練り上げ、粒あんに仕上げます。煮るときに使う水にもこだわっており、飲料水としても美味しいアルカリ性の水を用いることで、なめらかで口当たりのよいあんこに仕上がります。

和菓子がつなぐ心の温もり

来店されるお客様は高齢の方が多い印象ですが、もちろん若い方にもご利用いただいております。購入の目的も様々で、ご自身へのちょっとしたご褒美や、手土産として折り詰めをお買い求めになる方もいらっしゃいます。「これじゃないとダメなのよ」と言っていただけるのは、何よりの励みになりますね。和菓子の魅力のひとつは、季節ごとの変化を楽しめるところです。春は花びら餅から始まり、桜餅、草餅、柏餅と続き、夏には涼しげな水羊羹が登場します。季節行事やイベントごとに、自然と季節を感じさせてくれるのが、和菓子の持つ奥深さであり、魅力でもあります。あるテレビ番組で「お菓子を食べながら怒っている人はいない」という話を聞いたことがあります。本当にその通りで、美味しいお菓子を口にしているときは、誰もが自然に笑顔になるものです。和菓子には、人の心を和ませ、穏やかにしてくれる力があると思います。保存期間についてもご相談を多くいただきますが、商品によって異なります。たとえば最中や焼菓子などは「脱酸素包装」という工法で包装されており、2週間ほど日持ちするものもございます。一方で、2〜3日以内、あるいはその日中に召し上がっていただきたい生菓子もありますので、ぜひお気軽にお声がけください。

六浦のいま、そしてこれから

私は幼少期からこの六浦の地で育ってきましたが、最近では少子化の影響もあり、子どもの姿を見かける機会が減ったように思います。それでも町内会の盆踊りやお祭りでは、地域の方々が楽しんでいる様子を目にすることができ、ほっとするひとときです。この地域は瀬戸神社の氏子地域でもあり、神社の祭礼に合わせて町内でも祭りが行われます。神輿を持つ町内では神輿を担ぎ、子どもたちは山車を引いて地域に活気をもたらしています。私もまもなく還暦を迎えます。できるだけ長くこの店を続けていきたいという気持ちがある一方で、この伝統ある和菓子の世界に情熱を持って飛び込んでくれるような方が現れてくれたら嬉しいなという思いもあります。和菓子という伝統を守りながら、新しい世代へとつないでいく。その可能性を信じたいです。地域の皆さまには、さまざまな場面でご愛顧いただいていることに、心より感謝申し上げます。もし来店が難しい場合は、私からお届けすることも可能ですので、どうぞ遠慮なくご相談ください。また、これまで和菓子に馴染みのなかった方も、ぜひ一つからでも気軽に味わっていただけたらと思います。和菓子は、きっと心を穏やかにする、やさしい存在になってくれるはずです。

 

※上記記事は2025年6月に取材したものです。
時間の経過による変化があることをご了承ください。

御菓子司 名月 代表 齊藤 潔 (KIYOSHI SAITOH)

御菓子司 名月 代表 齊藤 潔 (KIYOSHI SAITOH)

  • 出身地:横浜市
  • 趣味:スポーツ全般(野球•バレーボール)
  • 好きな場所:横浜
  • 好きな音楽:幅広く
  • 好きな映画:洋画全般
  • 好きな言葉:『一所懸命』『真面目にコツコツと』

INFORMATION

御菓子司 名月

電話 045-701-7735
所在地六浦5ー23-29
最寄駅六浦駅 徒歩2分、金沢八景駅 約1.4km、追浜駅 約1.8km
営業時間9:30~20:00
定休日月曜日(祭日は営業)
ジャンル 和菓子